スパゲティはデュラム・セモリナ
バリ島で自炊をしていてよく食べるのが、スパゲティ。
オットが麺好きということもあり、毎週二―四回は、昼食として登場する。
もし、ご飯を炊くとなると、ご飯、味噌汁、おかずの三品を作らなければならなし、最低四十分はかかる。
スパゲティであれば、味噌汁を作っても二十分程度で完成する。
特に忙しいというワケでもないのだから、料理にもっと時間をかけても構わないんだけどねー。
ははは。かけられないわよねぇ。うっふん。
スーパーやデパートには、何種類かのスパゲティが売っている。
イロイロと食べてみた結果、『Barilla』というスパゲティは、割に食べられると思う。
濃いブルーの紙製の箱に入っており、五〇〇グラムで一万ルピア程度。
この紙製の箱、表面を除く全ての面に、保険証書の説明文のような
小さな文字で何らかの説明が書かれているのが特徴だ。
説明文は、この麺の調理法や、茹で時間、粉や原材料、取り扱い業者や
その電話番号、ドメイン名などなど。
イタリア語は当然として、ドイツ語、ロシア語、フランス語、スペイン語、英語、中東かタイなどの
ウニョロロンとした文字、中国語、どこの国のかわからない文字もある。
『おおっ、何で日本語が無いんだよっ。』
アタシは、この箱を凝視して、やっとのことで、『デュラム種の粉を使用』という文字を見つけ出す。
そういえば、日本のグルメ番組で、
『イタリア産の、デュラム種の粉を使った自家製のパスタです・・・』
などと、シェフが得意げに話しているのを見たことがある。
スパゲティのウンチクを語り合う番組にもこの言葉が頻繁に出てきていた。
家で食べていたママースパゲティも、『デュラムセモリナ一〇〇%』などと書いてあった。
こうなると、よく解らないながらも、『パスタは、デュラム・セモリナじゃないとアカン』みたいな気持ちになってくる。
素人は、専門用語の意味不明な情報に弱いのだ。
大型スーパーには、五キロ入りという業務用の袋も販売されていて、
消費量の多いウチでは、これを買っている。
レストランなどで食べると、オットは、一皿では足りずに二人前は頼むし、
待ち時間が長いので、ビールも何本も飲んでしまう。
スパゲティだけを食べに行っても、結構高い食事になってしまうのだ。
しかも、オーナーシェフは、開店から一年も経つと、新しく雇った女の子に作り方を教えて、
自分は闘鶏に行ってしまうなど、経営の手を抜きはじめる。こうなると、
味の方も落ちてしまい、もう二度と行けなくなるのである。
それを考えれば、味が同等としても、自炊は安いし、量的にも満足できるのである。
インドネシア人にとっては、スパゲティは、とても高い食材のようだ。
一生に一度か二度、観光客におごってもらって、食べたことがあるみたいな感じである。
大家さんも、『一度食べたことがある』とアタシに自慢していたもんな。
ミゴレン(バリ風焼きそば)などに使われている麺は、インスタント麺のように縮れた
乾燥麺が主流で、三人前で二千ルピア程度で買えるのだ。
まあ、奴らには、スパゲティもミゴレンに見えるに違いない。
同じミゴレンなら、安いほうで十分というサイフの事情もあると思う。
日本人なのにスパゲティを大量に買う我々は、バリ人に不思議そうに見送られるのであった。
おじゃらの『バリ島』絵日記
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絵と文・(C)おじゃら りか
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