私が、この映画を見たのは、横浜美術館での試写会に誘ってくださった方がいらしたからです。そのときに、監督の佐々木さんがゲストでいらっしゃっていて、館長さん、キュレーターの方とトークがありました。試写会は、国立美術館でも開かれたそうです。美術関係者が、この映画の公開に積極的なことは、本編を拝見し納得しました。美術の収集 イコール、美術品を生かすという行為だからです。美術館のコレクションのほとんどは、本人もしくは、収集家からの寄贈が中心という場合が多いのです。ゴッホや印象派のコレクションなどにしたって、ほとんどが一人のコレクターが所有していて、それを、まるごと美術館に寄贈したというストーリーが存在するのです。作品はバラバラにならずに済み、安住の棲み家を得ることができました。それらの作品が優れていることの認知が広がり、今や美術館の集客の目玉となってゆきました。世界中を巡回している人気作品ですらそうなんです。アートの源は収集家にある。そういうアート事情を支えている収集家を育て、筋のいい作品を寄贈してもらいたい美術館がこの映画の上映の手助けをするのは、当然の流れだと思います。 |
試写会のときに、佐々木さん自らが、映画の資金が集まらなくて大変だという話を伺い、チケットを二枚求めましたら、オリジナルパンフレットにサインを入れてくださいました。 |
二度目にお見かけしたのは、ワンピース倶楽部という収集家の勉強会でした。映画の公開を広げる活動を精力的になさっていて、立派だと思いました。私は、きっとご縁があったのだろうと思い、私の(稚拙な作品ばかりが並んでいる)図録を手渡しました。前回お会いしたときに、印象があったのか、チラリと覚えてくださっていたのがうれしかったです。そのときに、まちかど美術館のアートマップにも、小さくインフォメーションを入れてもよいかも伺い、許可をしてくださいました。 |
どちらのトークでもお話されていたのは、この映画は、ラブストーリーなんです。ハーブ & ドロシーの、アートへのLOVE。ハーブ & ドロシーの、収集家へのLOVE(友情)。ハーブ と ドロシーの愛の物語。最初の段階で、この映画は、コンセプチャルの説明的な番組構成になってしまったのを、もう一度、ラブストーリーに仕立て直し、より、多くの人が、気軽にアートに親しんでいただける、間口のような役割の映画になればよいと話されていました。 |
次回作への意欲佐々木さんは、現在、この、ハーブ & ドロシーの作品たちが、収蔵された美術館での展示などの映像を撮影しているところなのだそうです。次回作も楽しみです。資金調達も大変だと思うし、理解が難しいという理由で、敬遠されてきた現代アート作品の映画というだけで、集客も、大変だと思います。日本では、100年前に生まれた「印象派」が、100年経ってやっと、地位を確立してきて、人気が高まっています。映画もイロイロ作られました。ゴッホ、ロートレック、モディリアーニ、どの作家さんも、映画や小説により知名度が上がり、絵を見慣れてきた人が、やっと、作品の独自性を受け入れるようになったのです。佐々木さんの活動は、100年後、日本のアート会において、コンセプチャルや、ミニマルアートを、現在の印象派の作品のように、世に広めるための第一歩なのだと思います。ハーブは話しています。「とても純粋で抽象的なアートが出現した。良し悪しはわからなったがとにかく斬新だった。”誰もやったことがない”というのが気に入った。」現代作品の鑑賞・収集のポイントは、ここです。『誰もやったことがない』作品かどうかを見極め、その作品の普遍性や、恒久性、もしくは、はかなさ、刹那的な瞬間的な寿命。そういった部分を評価し、購入をする。そういう、本質的なことを、専門的な難しい説明なしに、すんなりと、学べる映画にまとまっていると思います。もう一つ、特記すべきところは、ハーブ & ドロシーの収集は、一人の作家の作品を、何点も持っているところです。作家が、作品とは何か、コンセプチャルや、ミニマル、そういった本質に気づくと、作品に表れてきます。また、自分の創作が進んでくると、作品が劇的に変化したり、少しずつ変わってくる、そういう変化の時期というのがあるのです。ハーブは、それをみのがさず、作家の、創作の進化の過程を見守るような収集を続けてきました。だから、美術館が、ハーブ & ドロシーのコレクションに一目置いて、敬意を評し、寄贈を受け入れたのだと思います。ただ持っているということではなく、作家の画業そのものを作品を買って支える。収集とは、そういうものだからです。多くの資金に余裕がある皆様がこれを読み、アーティストの作品を購入し、応援してあげようと思ってくださる方が増えるといいなと思います。 |
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