◆◆◆ 1656 ★ 世界記憶遺産・山本作兵衞の炭坑画 ◆◆◆
インターネットラジオFM北千住 ときどきゲリラ的に収録・生放送(あとはいつでも見れますよん)
2011.9.28 世界記憶遺産・山本作兵衞の炭坑画というのを見る。 ユネスコには、世界記憶遺産というものを選定する部署があるみたいで、何でも、日本の炭鉱画が、それに認定されたのだという。 山本さんは、14歳から炭坑に勤めはじめた。 なんでも、それまで、父親は、石炭を船で輸送する船頭だったのだが、丘蒸気(鉄道)が敷かれ、船頭の仕事がなくなり、学校にも行けなくなってしまい、炭坑で働かざるを得なかったのだという。 66歳ごろから絵を描き始め、定年退職後も、炭坑の夜警をしながら、70歳を過ぎても、炭坑の仕事に関われていたのだそうだ。 92歳で亡くなるまでの間に描かれた作品は、2000点にも及ぶらしい。 ここで、大変興味深いのは、山本さんの作品を、まとめ、世に出し続けた人というのが存在するということである。 絵というのは、描くだけでは世の人が知るところにはならないということになる。 |
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その方は、菊池さんと言う方で、彼の作品を図録にしたり、郷土の博物館に原画を寄贈したり、 そういう活動をされたに違いない。 ユネスコの世界記憶遺産には、アンネの日記やベートーベンの直筆楽譜などもあるらしいから、日本の炭坑の記録画が、そういった作品と並んで世界に紹介されるというのは、大変に誇らしい気持ちでイッパイになる。 山本さんは、はじめは水墨画で書かれていたのだが、ある人の勧めで、水彩画で描くようになったのだという。 どの絵も、一生懸命に描かれた絵で、当時の風俗をよく表した作品に引き込まれる。 その一つ一つの情景の表現には、炭坑で生きた人のたくましさや、つつましさ、一生懸命さ、命がけの仕事であったことなどが記されており、よく描いてくれたという気持ちでイッパイになる。 アタシは、イラストレーター協会の理事をやっていたことがあり、イラストなどは、大量に見ている。 どの絵も、美術品としては、浮かばれないというのが現在のところである。 イラストや絵本の原画というものの価値というのが、どうしてこんなに低いのかは、全く理解できないのだが、そういうものを超えて、人の心を引き込む作品というのは、沢山ある。 マーケットというのは、そういうものなのだ。 |
構想はオシオッサさん、作ったのはアタシ |
それにしても、2000枚というのは、やっぱ、才だと思う。 描いているうちに、絵もどんどん良くなったと番組では解説していた。 そりゃそうだろう。 山本さんの記憶の断片は、絵として、紙の上に記されたということになる。 山本さんは、自分の子供や孫に、自分の自叙伝を残すために、毎日日記をつづっていたのだという。 そうして、その日記をもとに、1400枚の本の原稿を書き上げたのだと。 ところが、奥さんに反対されて、その原稿は燃やしてしまう。 炭坑に生きる人達の苦境なども、本に記されているため、出版などして、後世に残してはならない。 奥さんは、そう考えたのだという。そうして、息子さんも、そうだろうとうなずいていた。記録として残すにははばかられる、イロイロな人間ドラマが繰り広げられていた。ということで、 生きるということは、一筋縄ではないということになる。 そういった、具体的な個人名を排し、作品という形で風俗を記録したというところは、別な才能だと思う。 何でも、事実を書き残せばいいということではないのだ。 文学でも、芸術でも、読む人への配慮というのは必要である。 |
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絵というものは、誰にでも描けるということでもない。 アタシは、趣味で描いている人が絵を見てくださいといって来るときには、一生懸命に描かれているかどうかを見る。 絵からは、一生懸命さというのは、伝わってくるものなのだ。 そういったものが見られない作品というのも、世の中にはある。 絵が上手くなってくると、技巧に走り、人の作風の盗用をベースに作り上げる絵というのも沢山できあがってしまうものなのだ。 昨今のイラストやデザインなんかも、そういう傾向が見て取れる。コミケなどのように、盗用が前提になっている娯楽もある。 娯楽であれば、それは構わない。 でもまあ、人に見てもらうのであれば、上手ければ上手いなりに、下手でも、下手なりの一生懸命さは、最低でも必要だと思う。 絵の一枚には、作家さんの苦悩や、才能までも現れてしまう。 苦しんだから、時間をかけたから、良い絵になるとも限らない。 良い絵とは何かを、自分で学び、少しでも高い場所に向かって進もうという気持ちがあるかどうか。 そういうことも、絵には表れてしまうのである。 山本さんの絵は、最後までヘタクソだけれども、一生懸命さは伝わってくるし、画面の臨場感も高い。 何よりも、彼にしか描けなかった絵を2000枚も描き、残し、日本の文化を世界に伝えたという功績は、計り知れない仕事である。 良い作品には、必ず光が当たり、世に残ってしまう。 そういうことであり、光が当たらないのは、絵が悪いからなのである。 |
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