◆◆◆ 1624 ★ 大作の仕立て直し ◆◆◆

インターネットラジオFM北千住 ときどきゲリラ的に収録・生放送(あとはいつでも見れますよん)

2011.5.7

同じ飲み屋街にある、メイローズが引っ越すことになった。引っ越し先は、表通りの、70番というラーメン屋の2階である。

メイローズは、ママが頑張り屋さんで、いつも外に出て、営業の電話をかけていた。

毎日通りで昼からカラオケできるお店は、メイローズとアムールだけなので、お客さんは、昼からカラオケを楽しみによく酔っ払って画廊の前を通るのだ。

特に、メイローズのお客さんは、ウチによく入ってくる。

それには理由があるのだが、ここには書かないことにする。

アタシは、酔った人は断ることに決めた。

どの人も、絵を見ようという気は全くないのである。

メイローズの引っ越しのとき、店舗のデザインを手がけた中国人の金城さんが、アタシが、ヴィットリアさんの書を書いているところを覗き込んでいる。

時間が余っているのか、もう、長いこと、アタシが書を作るのを見ていて、今度は、イロイロ口を出してくるのである。

なんでも、お兄さんが、中国で、書の画廊を商っているのだとかいい、書には詳しそうだった。

「アナタの書は自由でいいねぇ」

はぁ。面倒くさい人がまた来ちゃったよな。

ウロウロされると、書に集中できないじゃないよ。

結構な長文のため、途中で集中力が途切れると字の感じが変わってしまうので、困るんだよね。

このために、一週間ほどかけて、墨も作っている。

印刷屋さんから頂いた、マメの袋の裏を使って、何枚も練習を重ねて、文字の配置や大きさ、改行の位置などを決めてゆく。

金城さんは、自分でも絵を描いたり、デザインをしたりすると話していて、新しいメイローズの店舗を見せてもらう。

いい壁があった。

金城さんは、ここに絵を飾りたいんだという話をはじめ、アタシも、貸し出してもいいよと話が決まる。

が、彼は、アタシの右の絵(サムホール)がお気に入りだった。

「りかさん、この絵いいね。この絵を大きくしてよ」

オジャラ「ああ、この絵はヨカッタよね。自由だしね。

アタシは、60号のアクリルで少し色づけしたカンバスのことを思い出し、それに描いてみようと決意。

オジャラ「このマチエールは、アクリルではムリだよ。油彩だと2ヶ月ぐらい乾燥しないけど」

というと、アクリル絵の具で、似た感じでいいのだそうだ。

そうして、この絵の自由さに気づける人は、そんなにいないよなと思い、そういう人が来てくれたことを嬉しく思うのである。

ウチによく来る人の中には、この絵を見て、「おじゃらさんの絵はカンタンだ」

と断言し、周りの人がビックリしてしまうのだ。

まあいい。

自由と思うのか、カンタンだと思うのか、それは、その人の絵を見る資質にほかならず、別段、アタシも、この絵が傑作だったとは思っていない。

サムホールなどに絵を描いていると、なんでこんな小さい画布に絵を描いているんだろうと、情けなくなってくる。

ヤケになっているということでもないが、油彩の技量がドローイングの素描などと比較して、まだ劣るだけなのだ。

千住工房の女将さんも、アタシの素描を見て、

「オジャラさんは、ドローイングのほうが、油彩よりいいと思う」

というので、アタシは、

「油彩というのは、筆がおおきくて、粘度も高いから、このようなガラスペンのようなマチエールを出すには、結構大きい作品に仕立てなきゃならないのよね。まだ、油彩はそんなに作ってないからね、技量が素描に及ばないだけなの。

ドローイングが、ここまであがってきているからね、油彩ももっと上がってくるって信じてる」

女将さんもうなずいた。

人物の絵と比較して、薔薇は、自由度、低いよなあ。笑。

自由をとるのか、それとも、売れる絵を描くのか。

どの画家も、その間を行ったり来たりしているのだと思い、我を貫けた画家というのは、実は少ないんじゃないのかと、最近思い始めた。

はたから見れば、自由と思われるアタシだって、別に、完全に自由だということではない。

おじゃら画廊

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