◆◆◆ 1003 ★ 黄色い花粉の話 ◆◆◆
2007.10.5 |
一昨年、足立読売のKさんが、アトリエ個展の取材に来てくださったときの話。 「瓶の中に、黄色い花粉が入っていて、それが、大きな部屋に一つだけ置かれているんです。ぼくには、その作品の意味が全く解りません。どんな意味があるんでしょうか?」 という疑問を残していった。 アタシは、その時には何て答えたのか忘れてしまった。アタシにも理解できなかったから、まあ、適当にわかる範囲を話したのだと思う。 が、その後、何日かその話について考えて、その作品についての理解が一気に進み、現代アートへの扉が小さく開いたのである。 |
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状況を説明すると、その「瓶に入った黄色い花粉」が、私の脳裏に浮かび上がる。 そうして、その作品の意味について、何日も考える。 ということが続いたということになる。 そうして、アタシは、まだ見てもいない作品を、記憶から除外することが出来なくなっていた。 これが、作品の力ということになる。 まだ見てもいない作品を、こんなにも正確に脳裏に浮かび上がらせている。 それは、アタシに限らずに、ほとんどの人が、そういう風に、作品映像をノウミソに浮かべるはずなのだ。 日常にあるありきたりな品物が組み合わさっただけのその作品は、随分後になって、有名な作家さんの作品なのだと聞いた。 何でも、絶滅しかけている花の花粉で、集めるのに何年もかかったとか、作家さんは、地球環境保護をこの作品で訴えているとか、まあ、そんな解説が書かれていた。 でも、作品の本質はそうではない。 Kさんが、この「黄色い花粉」の話をアタシにしなければ、アタシが、ゲンダイ作品に進むことはなかったと思う。 この2年の間に、アタシの作品は、激変してきた。 私は、Kさんに、そのことについて礼を言った。 「アナタが、黄色い花粉の話をしてくれたおかげで、ゲンダイアートへの理解が一気に進んで、作れるまでになったのよ。ありがとうね。」 どうということもないやり取りではあったが、彼が『黄色い花粉作品』の話をしてくれたことに、私はホントウに感謝している。 |
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私のゲンダイアートへの理解を深めた作品がもう一つある。 それは、オタク展という展覧会の図録の付録で頂いた、「新横浜アリナちゃん」というフィギアである。 彼女は、アキバ系オタクが、オタクの為に作った展覧会の、アイドル的キャラクターである。 秋葉原の線路の上にドッカリと座る、巨体の美少女。 そうして、彼女の名前が、何故「新横浜アリナ」なのかを、アタシは、推定でも2週間ぐらい考えたと思う。 そうして、 「おおっ、作品と名前には意味(関連性)がないんだ」 という所に気がついた。 作品には意味がないのだから、考えても、答えなどでてきはしない。 見る側が、勝手に、作品には意味があると思い込んでいるだけなのだ。 |
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『作品には意味がある。』 もしくは、 『作品には、意味がなければならない。』 と思いこんでいる人は、実の所多い。 それが悪いことだとは思わない。 それでも、確実に、 「意味のない作品」 というコンセプトで作品を発表し続ける作家さんも増えてきている。 その事実や創作の意図についても、受け入れることができないのである。 それは、木村センセイのような、ゲンダイ系作家のグループを持たれる美術家であっても、そうなのだ。 センセイは、アタシに、藝大の先端芸術表現科の方の作品についての愚痴をこぼす。 「おじゃらさんね、机や椅子を全部引っくり返してね、それが作品だって言うんですよ。僕はねぇ、全くもって嘆かわしいと思うんです」 という話をいくつかされた。 アタシは、木村先生の話から、その作品の映像を脳裏に描き、ほくそ笑む。 そうして、オシオッサさんの、『ビニール袋に入れた息』の話は、するのはやめておこうと思うのだった。 長年創作に関わってこられた方でさえ、しかも、自分がゲンダイアーティストだと名乗っている木村センセイでさえそういう状態だもんなあ。 作品の解説をきちんと説明できる人材が不足しているんだよね。 便器や花粉の存在意義を理解できれば、ゲンダイアートをきちんと作れる人はもっと増えてくると思う。 この前、ゲンダイ美術館で、「ゲンダイアートを鑑賞する方法」みたいな、ハウトゥ本を立ち読みした。 最初のページで、有名な犬の絵の話がでていて、 「この犬は、日本の犬と、タイの犬を描いたんです」みたいな解説。実は、この方は、有名らしい。(ごめんなさい、名前忘れちゃいました) 犬の絵は覚えています。 そうして、ゲンダイアートの解説本の著者までも、ゲンダイアートの意味について、くどくど説明しているという実態に衝撃を受けた。 「解説者も解ってないんだよね。うん」 というのは理解できた。 しかも、日本のコレクターというのは、くどくどと解説されるのが大好きときている。 日本がアメリカ並みのアーティストを排出する日は遠い。 オシオッサさんの作品が理解される日は、日本には来ないかもなあ。 |
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