◆◆◆ 846 ★ 思いもよらぬ話 ◆◆◆

2007.2.2

母も年を取ってきて、最近は、ボケがかなり進んできたという自覚症状を持つ。

まあ、年を取れば、誰だって多少なりとも物忘れをするものだから、それはそれでいいと思うのだが、彼女には気になることがあった。

それは、自分がボケてしまったあとの、金の行方である。

自分が稼いだ金を、自分の理解が及ばぬところで使われるというのが納得ゆかない。

という「気がかり」なのだそうだ。

そうして、アタシと弟に、同じ額の何かをしたいという意思があるという話になる。

「ボケないウチに、アトリエの立替をしたらどうかしら?」

彼女はそう切り出してきた。

彼女には、家を建てるというささやかな夢もあり、自分で設計したアトリエに立て替えたい。

とまあ、そういう話のようだった。

その話は前から出ていたが、都度アタシは断っていた。

別に、新しくなったからといって、イイ絵が描けるということではない。

それでも、何もすることのない毎日というのはヒマだろう。

アタシ的には、「もう少し駅から近いところに、もう一軒中古の住宅が欲しいのよね。今の所は、場所が悪くて、来たいと思っている人が辿り着けないのよ。それに、場所が小さすぎて、どちらにしたって、倉庫は必要だからね。その予算なら、もう一軒、好条件な場所を探せると思うよ。

アタシ的には、ご予算あるならそっちにしたいんだよね。」

という話を電話でしたあと、イトーヨーカドーに買い物。

最近は買い物はバイト帰りにマルイばかりなのだが、あまり美味しくないので、久しぶりにヨーカドーに行った帰りの出来事である。

通りがかりの不動産の貼紙をチェック。

昔、不動産の仕事をしていたということもあり、不動産の貼紙を見るというのは、ライフワークで行われている。

そういう意味で、北千住近辺の不動産事情には詳しい。

土地の所有権移転。価格を見れば、とりあえずは母の予算内。

3丁目かぁ。近いよなあ。駅から4分。

周りが飲み屋街というのを差し引いても悪くない。

多少場所は狭くても、駅から近ければ、貸し画廊もできるし、(北千住には、今まで画廊が一軒もなくて、最近一軒オープンしたという噂を聞いているが、駅からは遠いし、まだ、行った事は無い)

とりあえず、乾燥した絵を展示できて、絵を作ったりするのを実演できると、臨場感もでるもんなあ。

最近アトリエに行けない言い訳をするつもりもないが、グラフィックのお仕事が手がかかるというのの他に、作業スペースが物凄く小さくなってしまったという物理的な事情もあったと思う。

年賀状を刷りたくても、プレス機の上には、油彩が山積みという状態。

テラコッタ彫像も、ゴロゴロと作業場に置かれて、アタシの創作の邪魔をしている。というワケである。

そういう話なので、アタシ的には、完成した作品だけでも、どこかに移動できないかなというコトを考えていた。

千住という町は古い町で、よっぽどの事が無い限り不動産は動かない。

もし動くとすれば、それは、家主が高齢のため亡くなり、財産を処分する必要があったとき。そういう場合が多い。

今のアトリエもそういう事情で安価にアタシが手に入れたという例である。

実は、今回の貼紙物件もそういう物件で、借主さんは何十年もそこで店をやっていたのだが、女将が高齢で亡くなり、一緒に手伝っていた息子さんも、昼の仕事との掛け持ちでは回しきれないので、退去したという物件である。

所有者は、相続の関係もあり(所有者も高齢というのも重なり)、現金化して、相続税を支払いたい。

という理由で今回売りに出たということのよう。

商業店舗で、二階は住宅。

人が住んでいないし、建物があるのに土地だけの所有権の移転という話は、見た目かなりまっとうな物件。

お安かったので、物件がどの程度の痛み具合なのかを見る必要があったが、アトリエやバリの家で、どんな悲惨な住居にもあまり驚かないという人生を送ってきたアタシにしてみれば、かなりヨイ状態。

立地的には、アトリエ、自宅、その物件はちょうど三角形となり、適度な距離である。

「ここに決めようよ。こんな物件、滅多に出ないと思うよ」

昨日の今日の話だというのに、私と母は、この話にかなり乗り気になっていた。

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