◆◆◆ 554 ★ Sさんが訪ねてくださる ◆◆◆
2005.11.16 |
Sさんが、遠い所から、わざわざ私のアトリエを訪ねてくださる。
お忙しい中、ありがとうございました。 そうして、「私は本が好きなので、蔵書印を頼みたいのです」というお申し出を頂く。 ハンコかぁ。 嫌まあね、作れるけどさ。 売るほどでもないんだよね。 勉強したワケでもないしね。 真っ直ぐ押せないとか、細かい作業はムリとか、力的には、そういうレベルなワケよ。 印の作品を見ていただいて、「ということで、この大きさに、その情報量を入れるのはアタシに(の技術で)はムリと思う。」 ハンコというのは、不思議なもので、持っているだけの印というのもこの世には存在する。 捨てたりもしない。 使いもしない。 印相が悪いと脅されて、何十万円も支払ったりもする。 アタシの印には印相ないんだけどね。汗 |
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そうして、ハンコの多くは、(趣味のレベルなので)知人や絵を買った人などに、おまけで差し上げている品なので、絵をお買い上げ頂く方向で話をまとめる。 ハンコというのは、原価が物凄く安い。 100円ということもある。 これに、15分程度彫刻を施すと、まあ、価値がつくということになる。 ハンコのデザインには、結構時間かけてます。数時間ということもあります。(主に電車の中) オリジナルのデザインの印を作るというのは、印の文字に執着している人には作れない。 文字をデザインできる能力も必要だということである。 人に使っていただく作品を作るときにこそ、デザインの力というものはつくものなのだ。 使う方が、雅印などとして、気軽に押してくれれば、それでヨイのである。 ハンコや書の人というのは、実は、文字から離れられない。常識とか、過去の作品というのが邪魔をしてくる。 所が、子供なんかの作品を見ると、本当に自由で楽しい世界が広がっている。 楽しいハンコの方がイイ。 |
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Sさんは、油彩を買えば、ハンコをおまけにつけるという話を聞き、油彩を買うことに決める。 そうして、今度は、どの絵にするのかという話になる。 水彩画の天使の作品などを広げ、「この絵にします」と、全身が空中に浮いている天使の作品を選ぶ。 次に、去年のカレンダーの原画なんかを見ていただく。 1枚3000円だけど(誰も来ないので)売れないと話すと、「これが3000円なら、一枚買って帰りたいです。」 などと言い出し、「油彩もあるのですから、ムリに買って頂かなくてもいいですよ」 とお断りしたのだが、ニコニコ、即決で、絵を持ち帰った。(在庫限りですが、絵の大きさが合えば、頂いた中古の額というのが、サービスでつく場合もある。) |
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そうして、少ない予算の中から、一生懸命に、絵を買って下さるという気持ちが、本当に有難い。 別に、人生に必要な品ということもない。彼にとって、そのお金を本に充当するほうが、ヨカッたかもしれないのだ。 値段を上げると、こういったお客様とのやりとりそのものも無くなってしまうのだと思い、それが残念なのである。 アタシが「気軽に手に入れられる価格」と勝手に決めている値段でも、買うほうは真剣なのである。 が、このスタート価格が、30000円となると、とりあえず、購入は保留されてしまうのである。笑。 商品を売るというのと、買うというのは、本当に戦いでエネルギーを消費する活動だと思わされる。 一ヶ月に3枚、小さい絵の注文が入ると、アルバイトに出なくて済むんだよなあ。(まだしてません) これが、3倍の値段で売れるようになると、生活も出来るようになる。 もしくは、3倍数を売ればオッケーという話である。 Sさんと、イロイロな話をしながら(というか、アタシが一方的にずっと話していたというムード)天使の絵は、一回目の描画を終えていく。 「これを乾燥させて、また塗るんです」 みたいな世界。 難しい構図の絵であったが、失敗しないで、油彩のアタリまでスっとつけられるようになってきた。 もう少し絵を買いたいと言ってくださる方が増えると、画廊からデビューする必要がなくなるけどなあ。 |