◆◆◆ 2186 ★ ヴィーナスたち ◆◆◆

個人的な感想にはコメントの前に*印

テレビの解説などは●印がついています。

2015年5月1日

ヴィーナス達

2015年5月1日 12:24

クラーナハ 父作 風景の中のヴィーナス 十六世紀前半 ドイツ

ツバの広い帽子、豪華なチョーカー。

乳房を手で隠そうともせず、堂々と晒しています。ほっそりとした腰つき、長く伸びた足。

その、子供のような、スレンダーなプロポーションはクラーナハ独自のものです。

湖面にうつるまちの姿。繊細なタッチで緻密に描かれる。

クラーナハは、いち早く風景の魅力に注目した画家。

ぶなの生い茂った森の前に立つ、冷ややかな顔のヴィーナス。この世の者とは思えない魅力を醸し出す。

美の殿堂、ルーヴル美術館でも、独特の官能美で人々の眼を惹きつける名画。

■十六世紀、二人の画家。デューラーとクラーナハ。

ベネチアで修行したデューラーが描いた「エバ」 健康的でふっくらとしたエバの裸体。

イタリアでルネサンスの伊吹に触れたデューラーは、人間の姿を理想化し、神に近い、崇高な姿で描く。

デューラーの裸婦は数点しかないが、そのためのスケッチは何百枚もあった。

理想的な裸体を見つけるため。

■クラーナハの裸婦。

1528年  現存するだけで三十二点の裸婦。

小さな乳房、体のラインも凹凸が少なくお尻も小ぶり。

ありのままの人間の姿に執着。あえて理想化しなかった。

デューラーとは対照的に、多くの裸体画を描いたが、素描は少ししかない。

絶対的な美を追い求めたデューラー

世俗的な魅力を追求したクラーナハ。ドイツを代表する二人の巨匠が目指したものは相反するものであった。

■この絵は、クラーナハの絵でも、特に評価が他界。

一糸まとわぬ姿のようであるが、よく見ると、透明なヴェールを纏っている。

透明なヴェールをまとうことで、より官能表現がましている。

^^^^^^^


■愛のアレゴリー ブロンツィーノの最高傑作。

1540年ごろ

マニエリスム ルネサンス末期の美術様式。

自然を観察するよりも、過去の巨匠作品を元に新しい作品を作り出す創作活動。

どこか人工的な感じがする。

シミ一つない、陶器のようなヴィーナスと、キューピットの肌。

引き伸ばされ、不自然なポーズは、マニエリスムならでは。

ヴィーナスと口づけをするキューピット。

周りを取り巻く登場人物は、何を意味しているのか・

漫然と見ているだけでは、何が描かれているのか分からない。

それが、マニエリスム。

フィレンツェ。

1559年。コジモ一世の結婚の装飾をきっかけに宮廷画家になる。

肖像画や宮廷の装飾、祝祭の演出も担当。ダンテの神曲を全て諳んじられるほどの知性。

博識だったブロンツィーノの作品は、機知に溢れている。

■宝石を磨き上げたような冷たい光を放つ 愛のアレゴリー

この作品が何を意味しているのか、諸説ある。

●薔薇の花を撒き散らす巻き毛の少年。快楽の象徴。愛のもたらす幸福と愚かさの両方を表す。

●少女は、欺瞞の象徴。蛇のようなしっぽ。こちらの手(右手)には蜂の巣 愛の甘い蜜



●反対の手には蠍。身を滅ぼす可能性のある愛の危険性を示す。



●時の翁 時の流れを司る。 筋骨隆々の老人。背景に砂時計。

青い幕をはがして、愛の真実を白日の元に晒そうとしている。

●冷たい顔をしてキューピッドと接吻するヴィーナス。愛に溺れることなく、キューピットの矢を抜き取ろうとする。

それぞれの思惑がすれ違う、二面性のある作品。感情に訴えるものではなく、博学な知識を駆使して読み解く絵画。

王侯貴族たちの愛した知的遊戯を楽しむ名画

−−−−−−

■ カバネル ヴィーナスの誕生 1863 サロンで好評を博す。

海の泡から誕生したヴィーナスが、漣の上に、煽情的なポーズで横たわる。流れるような金髪。その美しさを誇示している。

全ての男を虜にする妖艶な表情。

ナポレオン三世が二万フランで買い上げ城に飾る。

過剰ともいえる官能性をひめた名画。

カバネルは国立高等学校 19才で入学。二十二歳で留学を果たす美術界のエリート

国立高等美術学校の教授に任命され、多くの生徒を育てる。

新古典主義。当時のフランス画壇を牛耳るアカデミー派。

1863年のサロンで落選した絵、マネの描いた草上の昼食。

カバネルが神話の世界を描いたのに対し、マネは現実の世界を描いて酷評。

当時は、官能的な裸体であっても、神話を描いたものであるという言い訳がなければ、裸体画はゆるされるものではなかった。

ゾラの評価。ミルクの川で 溺死しているこの女神は、まるで娼婦だ。 ただし、この娼婦は、肉と骨からできているのではなく、

ピンクと白の砂糖菓子でできている。

印象派で新しい絵画を目にしているゾラには、この絵画は古臭く見えたのである。

カバネルの作品は、印象派を酷評したため、評価が低くなっている。皮肉にも、その絵はオルセー美術館に展示されている。(印象派の殿堂)

*ゾラに一票。毒舌のアタシも、あそこまではまだ及ばない。

おじゃら画廊

Established 1998 Rica's Bar WEB SITE & Since 2003 Atelier Ojara.
Copyright (C) All Rights Reserved by Rica Ojara.