◆◆◆ 175 ★ 公募展応募を考える-2 ◆◆◆

I.M.pressさん表紙イラストより

2004.9.4

私は、何かをしようとするときに、お客様だったらどう考えるのか?

をいつも考える。

専攻が消費者志向マーケティングだったからというコトもあると思う。どんなことでも、そうやって考える癖がついている。

雑誌社様ならどう思うだろう。

次回表紙から、オジャラ色バリバリで、女の顔ばかり提案されても、それはそれで困るのだと思う。

『アタシらしい絵』であることよりも、『その雑誌に合った絵』という方が重要である。

雑誌を売るために表紙の絵というのがある。

中身を紹介するために、お金を払って絵を描かせているのである。

イラストの仕事というのは、どんな内容であっても、お客様が望む絵を描ける人に仕事が回ってくるということになる。

公募入選を目指した、アタシらしい絵など、論外である。

作品を見返すということは、ホントウに大切な時間だと思わされた。

私は、自分が描いた作品をカラーでアウトプットすらしていない。

今までは、雑誌本体があるからいいだろうと思っていたが、原画は原画で大切なものである。

次に、公募の立場に立って考えてみる。

彼らは、有能なイラストレーターを発掘・サポートするためにこの公募を開くのである。有能なイラストレーターとは誰のことを指すのか?

イラストレーターの協会ということは、みんな、イラストで飯を食っているということに他ならない。

イラストの仕事は、画家とは違う。

クライアント(発注者)がいなければ、自分たちは生活することができなくなる。

発注者の為の作品になっていなければならないということだ。審査の視点は、発注者の立場と全く同じということである。

もちろん、個性は大切である。

でも、優先順位は、『発注者の希望に沿った内容の絵』であることが一番上に来なければならない。

作家の個性があるかないかは、『発注者の希望』を満たした上で更にあれば尚可ということになる。

とある研究所の話を聞いたことがある。

『ノーベル化学賞受賞を目指し、毎日遅くまで頑張っています』

と、その研究所のスタッフ全員が抱負を述べるのだそうだ。

その取材記事を書いた人は、余りのことに呆れ果てたということだ。

『ノーベル賞』というのは、世の中の役に立つ、優れた活動をした人に贈られるモノであり、賞獲得そのものを目標とすべき場所ではないからである。

アタシは、俳句のことも思い出していた。

俳句というのは、物凄く激しい文学である。

何が激しいのかといえば、俳句を詠むために集った人の俳句を、それぞれが投票し、多数決で俳句を選ぶという趣向を主な活動としているところである。人間であれば、誰だって、人に認められたい。

自分の俳句がイイ俳句だと、誉めて欲しい。

センセイに誉めて欲しい。

沢山の票を集めたい。

そうなるとどうなるのかという話である。

人に媚びた、嫌な俳句になってゆくのだ。人間関係も荒れる。人は妬み深いものであり、俳句を理解していない人ほど、攻撃は他の人や、人の俳句を否定することに向けられてゆく。(実際のところ、驚くべきことなのだがそういう会は多い)

自分の俳句作りを忘れ、票を獲得するための俳句を作るようになってゆく。

私が、俳句の会から離れたのは、自分の俳句を作るためである。

俳句は、絵と同じで一人で作るものである。

誰に媚びることなく、自分のための俳句を作る為には、人間らしいドロドロは必要ないのである。

自分は自分の道を行けばよい。

そうしてやっと、自分の考えがまとまり、心が落ち着く。

どの絵を出そうかと考えていたけど、最近の絵の方が、表紙の絵によりフィットしてきつつある。

天使の絵を含め、ここに載せている絵は、少なくとも8ヶ月以上前に描かれた作品で、先月号から描き直している新しい作品とは差があるのである。

個性はまだ出せていないけど、いくつも作ることにより、安定してくるはずなのである。

一流の先生方に絵を見ていただけるチャンスというのは大切にしたい。

私は我流なので、そういう方の意見を聞くチャンスが全くない。

絵の公募とイラストの公募の違うところは、仕事と直結しているところだと思う。絵の公募は、入選したからといって、絵が売れるというコトとは違う。

しかしながら、画力の指標にはなる。

宮本三郎は、どんな展覧会でも、落選することなどなかったというのと同じである。

絵の公募に入選するということは、ある程度展示に耐えられる作品のレベルを保っていなければならないから、●●展入選であれば、ある程度の実力がある。とい指標にはなるということだ。

ただ、この場合も、公募に入選するために、他の絵を研究するという話ではなく、『自分の絵を描き自分の世界を表現できているかどうか?そうして、その絵が優れているのか』というのが、入選の最も大切なポイントなんじゃないのかと思う。その部分は、イラストであっても同じである。

多くの画家のゴールが、いつの間にか、公募入選に話がすり替わっているのである。

人間というのは、全く忘れっぽい。

Established 1998 Rica's Bar WEB SITE & Since 2003 Atelier Ojara.
Copyright (C) All Rights Reserved by Rica Ojara.