◆◆◆ 027★黒ニスの話 ◆◆◆

2003.9.7

黒ニスの話。

銅版画のセンセは、『オジャラさーん。なんか、いい方法ないですかねー。』

とアタシに尋ねてくる。

『クロニスなんですけどねー、なんかいい方法がぁ・・・。』

前回に引き続き、今回も同じことを聞かれてしまう。

まだ持ってないっちゅーの。

クロニスは、ハチミツのような粘度の液体で、広口のガラス瓶に入れられて売られている。

これに、細長い筆をつっこんで、ニスを筆先につけ、版の上に塗るという作業がある。

この、黒く光った部分が、黒ニスを塗った部分。

これを塗ることにより、グランド(下の黒い部分)に空いた小さな穴や、失敗した線を消しこんで、腐食させないようにする作業である。

この黒ニス、ベタベタしていて、毎度毎度、灯油などで、筆を洗ってしまわないとならないのが、とても面倒なのである。

しかも、筆にベッタリとついてしまうと、なかなか細かい部分にだけ塗るというのが難しい。

そんなこんなで、みんな困っているのだが、センセイよ。アタシに聞くな。

金を払って版画を習っているのはこっちなんだけどなあ。

9.8

オジャラは、仕方なく、100円ショップを物色し、いくつか使えそうな品モノを仕入れてくる。

頼まれると嫌と言えない性格なのである。

買ったのは、マニキュア瓶に入った、マニキュア薄め液。

爪にエンボス模様を描くプラスチックの樹脂の入った容器。

お弁当のときに、ソースなどを入れる液体容器。

爪にエンボス加工する樹脂は、ペパーミントグリーンで、何故かウナのボディカラーによく合った。

そんで、容器の方を使いたかったオジャラは、中身を早く使い切りたくて、フタにデコレーションしてみることにする。

おおっ。かなりカワイイ。

ネイルアーティストなる人たちが、あの、小さな世界に熱中するのも、なんか理解できるなあ。

このエンボス樹脂は、このあと、あらゆるペットボトルのフタに付けられて、アトリエは、何気でカワイイムードになるのであった。

そうして、そんなことをしている合間に、母が礼文島で拾ってきた丸い石に、顔を描いてくれと頼まれていたのを思い出す。

筆ペンと、ハンコ用の朱肉を使って、笑い顔を描く。おおっ。かなりイイ感じだよぉ。

額縁屋の話によると、下北沢辺りだと、この程度でも売れるらしい。『北千住じゃあダメダぜ、売れねーよ』などと、ワケのわからない話で盛り上がる。

確かに、荒川土手で、小石を拾って、自分で顔書いたほうが安いもんなあ。

そうして、この三兄弟は、近所の家の玄関に飾られることになったのだった。なんじゃそりゃ。

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