◆◆◆ 014★風景画の男の話 ◆◆◆

2003.8.12

桐谷逸夫さんのペン画のポストカード
東京の下町。

風景画の男は、ノコノコとアトリエに入ってきて、友人の絵などを見て回る。

アタシの絵も見せろなどと言い出し、

『コーヒーでも飲むか?』と聞くと、

冷たいお茶とか、ビールにしてくれなどと、勝手なことを言い始める。

厚かましい男である。

それにしたって、エアコンで部屋が冷えるまでには、まだ少しかかりそうだったし、お茶よりも、ビールを飲む案に賛同したアタシは、冷蔵庫からビールを取り出したのであった。

 

桐谷逸夫さんのペン画のポストカード
隅田川。

夏なんだから、当然だよなあ。

 

彼は、クレヨンのスケッチなどを見た後、アタシの顔もスケッチしたいなどというので、アタシも、しぶしぶ、オッチャンの顔をスケッチすることにした。

オッチャンは、スケッチに際しても、紙を出せとか、ペンを貸せなどと、自前のを持っているくせに、人に出させている。うーむ。性格的な問題なのか?

サイン入り肖像画をゲットするオジャラ。

ツイテいるぜ。

 

彼的には、『自分が持っていない画材などで描いてみると、刺激になっていい』のだそうだ。なるほど。確かに、アタシが使っている画材は、特殊だからな。(インドネシア製)

男はどちらかというとあまり創作意欲が湧かないオジャラではあるが、人物が中心なので、モデルがいると、絵は何枚も描けてしまう。
オッチャンであっても、描きだすと、とまらなくなるということはある。

オジャラが描いたオッチャン。

タレ目だぜ。

スキャナーがA4サイズまでしかないので、A4のコピー用紙しか持っていなかったが、やはり、紙が小さいことが判明。A3も買っておくんだったよ。

風景画の男は、ビールをガブガブと飲み、アタシのスケッチを何枚か描いていた。

イロイロな場所でスケッチをしたときの話などをしながら、相手の顔を描くのだが、男は、『今度新聞の挿絵とエッセイを連載することになった』などと語り始める。

おおっ。ここで慌ててはいけない。

まず、アタシは、新聞社名を確認することにした。

新聞といっても、足立区が発行する、『ときめきあだち』だったりすることもあるからなあ。

まず、何新聞か聞く。おおっ。大手新聞社じゃないか・・・。首都圏版で、毎月?毎週?一回連載されるのだそうだ。

アタシは、30枚ほどオッチャンの顔を描いてしまい、飽きてきたので、ハンコを作る提案をした。

ハンコをどの大きさにするのかとか、
どの文字にするのかでも、
また、厚かましいことを言って来るオッチャン。

まあ言ったもの勝ちというのはあるよなあ。

言わないと、相手には自分のキモチは
伝わらないし、リクエストを出して、
より、自分の理想に近づくのであれば、
それに越したことはないもんなあ。

新聞社に絵やエッセイを連載する程のオッチャンであれば、やっぱ、画家なのだろうし、ハンコぐらいあげておこう。ハンコというのは、原価100円の割りに、買うと高い品なので、なかなか作ることができないのだ。

一昨日に到着した、大量の印材(約50本)で、アタシの気も大きくなっており、一個くらいあげてもいいかという気持ちになっている。

彼は、絵を描くので、ハンコは、いくつも欲しいと思っているはずなのだ。

そして、いつも持ち歩くし、使うたびに、アタシの事も思い出してしまう。

なんかのきっかけで、展覧会などに呼ばれ、新聞社の担当を紹介してくれるかもしれないしなあ。

『新聞社の担当の人は、続けられる限り連載して欲しいなどと言い出して、イロイロな場所にスケッチに出かけている』などと、オッチャンは話し始め、『アタシの事をインタビューさせてくれ』と申し出る。ビールをガブガブと飲んだ上に、タダで取材しようなんて、やり手だわぁ。そういうことなら、

『外資系上場企業の超エリート、
バブルOLだったと書け』

と、無理やり書かせるオジャラ。

アンタも、相当だぜ。

そして、『新聞社の担当の方、
ネタに困ってるんっすかね?』

などと、突っ込んでしまった。

(注:新聞・出版関係の人は、いつも、絵や文を書ける人を探し続けるのが仕事なので、とりあえず、ある程度こなせると、次が見つかるまで、使い続けるという傾向があるのをアタシは知っている)

夕飯のとき、オットにその話をすると、

『そんな失礼なこと、もう二度と言うんじゃない』
と叱られてしまう。

オットは、長期に失業中にもかかわらず、日本的な常識は、まだ持っているようである。ホッ。

そう言われれば、確かに失礼かも・・・。

たはは。申し訳なかったっす。
ごめんなさい (m_'_m)ペコリ!

この隅田川の写真は、お台場のオフィスにいたころ、なんだかよく見ていた景色に似ているのだ。

そうして、どうやって、仕事が来るのかなどということも、オッチャンは、勝手に話しはじめる。

屋外で風景をスケッチしていると、雑誌の広報担当の人などが、向こうから話しかけてくるのだそうだ。

おおっ。なるほどぉ。そうだったのか。

画家の営業は、『蟻地獄型』なのか。

そういえば、オジャラのお友達のヒロミさん(二科展特選画家!)も、そんなこと言ってたなあ。

炎天下で風景画描くのは、アタシのライフスタイルに合わないんだけどね。冷房効いたところで、キレイなおねーさんのヌード描く方が、好きだなあ。

まあいいや。日本では、画家は、風景画の人が、最も成功するという話を聞いたことがある。その次が静物(花とか、壺とか、そんなもの)そして、最後が、人物で、しかも、服来た人たちだもんなあ。

アタシが目指しているジャンルは、その下ってことになるよなあ。(今の所、ヌードばかりなので)まあいいか。今そんなことを考えていても仕方ないし。

そういえば、ご町内の女流画家も風景。この方も風景。やっぱ、日本は風景画なのかしらねえ。

などと思っていると、ハンコが完成し、オッチャンは、スケッチの続きに、女流画家の家の前に戻るという。そして、ハンコのお礼に、彼はポストカード7枚を2セットくれるという。げげっ。

『こっ、これ、印刷にいくらかかったんっすか?』

『1000部で100以上は払ったかなあ。』

『マジっすか?』

いきなり聞きたいことを切り出すオジャラも、オッチャン並に厚かましい。

そんなこんなで、オッチャンと、スケッチを交換し、サインを入れてもらう。

それから、ポストカードを額にいれて、お部屋に飾って、届いたばかりのコーヒー豆を焙煎機にかけるオジャラなのであった。

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