◆◆◆ プレートマークの作り方 ◆◆◆

版が完成すると、ウレシイっすよね。

そんでもって、刷り上った作品をチェックすると、

版画の周囲のインクのヨゴレが気になったりします。

プレートマークがきちんと作れるようになると、版画の格がぐっと上がります。

そんなもんで、今日は、その辺、重点的にご紹介します。

この左の作品ね、周囲がインクで汚いでしょう。

これはね、プレートマークが、ちゃんと作れていないからこうなるのです。

アタシの場合、腐食がメチャクチャ深いということもあり、そうすると、銅板の周囲がガビガビに腐食されてしまうんです。

そのガビガビをツルツルにする作業を、

『プレートマークを作る』と呼んでいます。

この道具は、バニッシャーといいます。

バニッシャーちゃんは、キチントした銅版画を作ろうと思ったら、必ず必要な道具です。

理由は、銅板に出来てしまった傷を平らに伸ばしたり、プレートマークを作ったりできるからです。

このバニッシャーは850円の品で安かったっす。

普通4-5000円とお高いです。

これが無いと、版の傷を取り除きたいときに、取り除けなくて、不満が残ります。

本格的に銅版画にチャレンジしたい方は、一個買いましょう。

このお道具は、スクレイパーといいます。

まあ、あればあった方がいいっすね。

バニッシャーがあれば、無くてもいいっす。

プレートマーク命の方は、買いましょう。

文房堂のお教室で、生徒さんの作業を撮影させていただきました。一人で、この作業を撮影するのはムリだからです。

状況を説明します。黄色い部分はテーブルです。

黒いネットのような品は、滑り止めです。

100円ショップで売っている、ゴムのような素材で出来た滑り止めは、銅板に描画したり、プレートマークを作ったりするときに、銅板が傷ついたり、滑ったりしなくて、とても便利なので、ほとんどの人が使っています。

その上に、銅板を置きます。

プレートマークを作る所は、机の外に出ています。

右手には金属ヤスリを手に持ち、大体、こんな角度で、エッジを削ってゆくのです。

スクレイパーを持っている方は、ここで利用します。

金属ヤスリで最初に、ざっと削ったエッジは、ザラザラしています。

そんなもんで、スクレイパーで、ザラザラを削るようにして、取り去ります。

ケータイ電話で撮影したんで、画像乱れていた申し訳ないっす。

銅板全体に、金属ヤスリをかけたあと、バニッシャーで、ギザギザを、ツルツルに伸ばしてゆきます。

銅板の端を、机から少し出して削るというのがコツです。

結構力がいるし、疲れます。

こんな感じ。バニッシャーの反対側も使います。

気合入れますよ。この作業。

銅版画で、一番力が必要なのは、この作業です。

こんな風に、ツルツルにします。

ここがギザギザしていると、凹の部分にインクを詰めたときに、どうしても、プレートマークの凹にも、インクが入ってしまうのです。

ツルツルにすると、拭き取りがカンタンで、

印刷したときに、美しく刷り上ります。

これくらい、プレートマークを作ると、

まあ、見る人が見ると、『時間かけて、作っているぜ、買ってやるか』

みたいな話になるわけです。

見る人は、この差が、どんな差なのかを理解できるということなんです。

版画というのは、沢山作れてしまいます。

だけど、一つ一つの作品のレベルを高い状態で保てるかというのは、作家の気合の入り方なのだと思います。

山本容子さんの作品は、アタシと同じ、ディープエッヂングです。

だから、腐食のときに、プレートマークは、ボロボロになってしまうんです。

アタシは、それが嫌で、セロテープで周囲を保護してから腐食しています。これだけで、最初に作ったプレートマークは、ほぼ、完全に守られます。ほんのひと手間ですけど、実は、これは、剥がすのがとても面倒なんです。たははは。(本当)

見る人が見ると、山本容子は、手を抜いているとしか思えないということです。

別にそういうワケじゃないんですけどね。作家が、自分の作品をどう完成させるかというのが、芸術なんです。

彼女の作品の場合、刷りにも油膜が残るように仕上げてあるし、プレートマークも、ギザギザにして、わざと、作品を汚しているように作っていると、ご本人も、お話されていました。

意図してやっているということです。

でもさあ、無名のアタシごときがね、手を抜くなってことですよ。まだ、絵で食えているワケではないんですから、一つ一つ、丁寧に取り組んで、技術を積み上げていかなければならないって、肝に銘じています。

自分で手を抜いた作品を見ると、自分に本当にアタマにきた上に、情けなくなります。

自分との戦いなんっす。

この作品なんかも、キチっと、プレートマークができているので、作品の中の線が、ぐっと引き立ちます。

バリ島の銅板なんで、どうも、版の磨きを頑張っても、なかなか、曇りが取れないのが悩みですけど、もう少し磨いてみようかと思っています。

赤いインクは、刷るのは難しいです。

プレートマークは、インクを紙で吹き上げた後、さらに、ベンジンをちょっとつけた布で、周囲を拭き取って、完全にインクを取り去る人もいます。

(センセイは、間違いなく、その手間を惜しみません)

アタシは、プレートマークをツルツルに仕上げることで、紙でもインクを完全に拭き取れるように版を作っています。

版全体に曇りがあるので、ベンジンを使って周囲を拭き取れないというのがその理由です。

次は、ニードルなどのお道具に関してご紹介します。