◆◆◆ 銅版画の刷り ◆◆◆

版が完成したら、すぐに刷りたいキモチでイッパイになりますけどね、まだ準備があります。

まず、印刷する前に、紙を準備しておかなければなりません。

オジャラは、紙は、300kgの紙を使っています。

バリ島にいたときに、版画紙を買うことができなかったので、シンガポールの紙屋で、手に入れられる、厚めの紙を大量に購入していて、今は、その在庫を使っています。

版画紙は、水につけるので、何年か経って、カビが生えたりしてしまいます。

そんなもんで、中性紙というのを使うのが一般的です。(ハーネミューレとか、アルシュというメーカーの紙は、版画紙と呼ばれています)

オジャラが使っている紙の300kgというのは、水張りしなくても、乾燥したときにヨレないので、気に入っています。

水張りは面倒だから、やりたくないというのが本音です。

紙は、印刷するサイズにカットして、水に漬けます。最低でも10分。出来れば一晩つけて、紙についている、のりをよく落とします。

インクのノリが断然よくなります。

銅版画は、比較的に、どんな紙にも印刷できるのが特徴です。

オジャラは、外国製の無地の便箋なんかに刷ったりもします。

完全に乾いたら、平らにして上から押せば、悪くありません。

インクを用意します。

オジャラは最近赤に凝っているので、自作の赤を、パレットの上で作ります。

パレットには、肉用の、白いトレイを使っています。使い捨て出来て便利です。

何日も持ちません。念のため。

トレイの上で、絵の具を混ぜます。

絵の具は、油絵用のペインティングナイフでよく練ると、ツヤがでるのだそうです。

銅版画の場合、インクの固さも、とても重要です。フランス製のお高いインクは、柔らかくて、拭き取りやすいですし、日本のお安いインクでも、拭き取りやすいのもあります。

オジャラは、腐食が深いディープエッジンク゛なので、柔らかいインクだと、印刷が失敗することもあり、一日置くくらいの方が、丁度いいと思うこともあります。

インクが固くなると、拭き取るのに時間がかかりますので、なんともいえません。

お高いインクの方が、色がキレイというのは、言うまでもありません。同じ黒でも、全く違う色でございます。

インクは、ゴムベラで、銅板の溝に詰めてゆきます。

銅版画でグランドの次に難しいのが、この、刷りの作業です。

インクを溝に、きっちり入れる技術。

銅板の表面のインクだけを、版から取り除く技術。

これが、とても重要になります。

山本容子さんの『銅版画で遊ぼう』というテレビ番組で、彼女は、リノニウム版を小さくカットしたへらで、インクを溝につめていました。

アタシも、真似しています。

(上のトレイの上の、青い物体が、自家製のゴムへらです)

縦横ナナメ、十文字に、しっかりと詰めると、テレビで教えてくださいました。

肝に命じています。

理由っすか?刷りがちょっとでも失敗していると、売れないからっす。

ちょっと気を抜いただけで、全ての作業がムダになるということです。

左の写真が寒冷紗という、銅版画のインクを拭き取る用の専用の道具です。

これを使った方が、手が真っ黒になってしまったなどと、メールを下さいました。

アタシが、軍手を使うように書かなかったからです。申し訳なかったっす。

腐食が2時間程度で、版も大きめの方は、インクを詰めたら、寒冷紗で拭き取ると、刷りがぐっと早くなります。

紙で拭き取るときに、軍手をしていると、軍手が、線の中に入り込み、インクも取れてしまうので、紙で仕上げるときには、軍手ははずします。

この辺がねえ。沢山刷ると、感じつかめてくると思います。山本容子さんも、夏休み、ガッコウに行って、誰もいない教室で、毎日100枚ずつ刷ったと、話されていました。

刷る技術というのは、やはり、イロイロな作品を沢山作って、自分なりの刷りというのを身につけなければなりません。作品によって、刷り方が変わってくるのです。

アタシの作品はね、どーでもいいようなのが多いですけど、前面に絵や模様が広がっていて、刷るのはとても大変なんです。銅版画を作ったことがある方なら、理解できると思います。

沢山作ることによって、確実に、技術が身についてきているのです。

オジャラは、マンガをカットした紙でインクの拭き取りをします。

『寒冷紗』や、『人絹』と呼ばれる、銅版画のインク拭き取り専用の布もあります。

寒冷紗を使うと、アタシの場合、溝の中のインクまで取れてしまうので、あまり使わないです。

もっと大きい版になったら、使うと思います。

いまは、版そのものも小さいので、全部紙だけで拭き取っています。

一回の拭き取りに、何十枚も、この紙を使っています。

といっても、拾ってきた少年サンデーですけど。たはははは。

ゴミの日が楽しみだわあ。

どれくらい拭き取るのか。

これが、版画の刷り上りを決定します。

ざっと、表面のインクを紙で取ると、こんな感じになります。

インクの拭き取りは、これでは十分ではありません。

指の腹を使って、更に、白くしたい部分を丁寧に拭き取ってゆきます。

左の写真の、ホッペの部分だけ、色が少し輝いていますよね。

インク以外の部分を完全に白くするには、銅の本来の色が、見えてくる位、拭き取らなければなりません。

この作業は、根気がいる作業です。

オジャラは、顔と、手の部分だけ白くしたいので、そこを重点的に、インクを拭き上げてゆきます。

全体的に、ピカっとする感じですね。

溝のインクは残したまま、表面だけピカっとさせる。

この、ピカっと具合を習得するのが、独学だと大変な部分だと思います。

指の腹で、結構、力を入れて磨かなければなりません。

どなたか、近くにいる、銅版画をやる方に、実演していただくのが一番だと思います。

なんとなく、感じ、つかめてきましたか?

この、拭き取りが甘いと、銅版画がぼんやりと膜がかかったようになり、美しくないのです。

カラーインクだと、そういうのも悪くないですけどね、見る人が見ると、手を抜いているとか、失敗していると思われちゃうということです。

いよいよ、試し刷りに入ります。楽しみだわあ。