講習会後のインクの行方  2004/2/3

文房堂の、銅版画のお教室で、カリスマ様のインクをみんなで試してみようと思い、持参する。

ところが、インクの濾し器が無いということがわかり、インクの利用は見合わせることにした。

私の版がキズつく程度であれば、私がまた傷を取ればいいのだが、他の生徒さんの版が傷ついてしまったりすると、責任がとれないからである。

どの方も、時間をかけて作られた、自分の版で、とても大切に扱っているのである。

それでも、一枚くらい、やはり刷ってみようと思い、松煙墨のインクを少し出してみる。

何故このインクにしたかというと、カリスマ様が、参加者に持たせてくださるために、何時間も黙々と濾し器にかけてくださっていたインクだからである。

オイルを足さなかったので、なかなか拭き上がらない。

なるほどぉ。

オイルを買わないとならないわぁ。

それに、やっぱ、かなりザラっとした感じが残っているような気がする。

はぁ。

版に傷がつかなければいいけれど。

私のインク作りのレポートを見たカリスマ様は、私宛にメールを下さっていた。

何と書いてあったのかといえば、

『リンシードオイル燃焼中のアクシデントも,通常ではありえないことで、神経が行き届いていなかった事を猛省しています。

手作りのオイルを持って還ってもらえなかったことをお詫びします。』

おおっ。あのトレビア企画は、お土産用だったのか。なるほどぉ。

大量のインクを練ったり、大量のインクを濾したりされていたので、相当お疲れになったと思う。

オイル炎上の時には、お顔に軽いヤケドまでされていた。大丈夫だったのでしょうか?

こんなときにも、『誰にも怪我が無くてよかった』などと、みんなの安全を気遣う姿の、どこまでも生徒思いの先生の姿勢には、生徒全員心が打たれ、

『親分、どこまでもついてゆきますぜ』

という気にさせられる。

カリスマと私がお呼びしたのも、他の生徒さんから、尊敬を集めているのも、こういう、生徒思いのお心遣いから来るものなのである。

アトリエに持ち帰った、3種類のインクをどうしようか考える。

私は、どちらかといえば、赤いインクを作ってみたいので、黒いインクは、きっと、カチカチに固まってしまうと思われる。

全部を裏ごししようと考えたが、まだ濾し器も持っていない。

問題が発生したときの、解決の手法はカンタンである。

まず、問題を解決するための、2つの方法を考えてみる。

『どうするのがベスト』なのかという解決案の立案。

もう一つは、今の問題から発生する被害を、最小限の食い止める、当面の簡単な改善案。

この2つの方面から考えるのが、正しい解決方法なのである。

今回の問題は、

●インクの量が多すぎて、2ヶ月では使い切れない。

●インクの中に、石や砂が入り込み、これで刷ると、版がきずついてしまう。

というものである。

上の問題の解決方法は、

→だれかにあげる。

→自分で他の用途に使う。

→ムダにしてしまう。

のどれかである。

この中で、もっともよい解決方法は、二番目の、自分で他の用途に使うという選択肢である。

一番リスク(今回の場合、自腹出費)が少ないからである。このインクは、材料費、講習費、電車賃などを勘案すると、一包み辺りの値段が5000円もするのである。

アタシは、インクが劣化しないうちに油絵にしてしまうという案を選択する。

アタシなりには、かなりイイ選択肢だったと思う。

カリスマ様も、参加の皆様も、怒るだろうなあ・・・・。はぁ。

ごめんなさいっ。

そうして、この、粘度の高い、ツヤツヤとしたインクは、画布に独特のマチエールを生み出して、なんとも個性的な作品に生まれ変わる。

この作品が、カリスマ先生のインクを使った作品として、私の電子本やら、HPに記録され、何年も残ることになったのだから、ムダにしてしまうより、ずっとヨカッタと思う。