油絵の既成サイズとその素材

イロイロな話がごっちゃになっていて、申し訳ないっすね。ま、雑学ってことで、ボチボチと。

油絵のサイズと価格について

カンバスサイズ 大きさ(mm)
F0 (180x140)
SM (227x158)
F3 (273x220)
F4 (333x242)
F6 (410x318)
F8 (455x380)
F10 (530x455)
F12 (606x500)
F20 (727x606)
F30 (910x727)
F50 (1167x910)

私が制作している作品を含めて、一般的な日本の画家さんが作っている油絵のサイズは、通常、このように、規定のサイズのカンバスを使っています。

何故、規定のカンバスを使って描くのかといえば、既製品の額縁に『ポコっ』とはめ込むことができて、トータル金額がお安く済むからです。

ですから、お求めになるときには、この、『F●号』というのと、お値段に注目しましょう。

絵のサイズが大きくなると、額縁も高くなります。チェックするのは、その辺りです。大きい額縁は、メチャクチャお高いです。

また、注意しなければならないのは、若手の貧乏画家さんです。

彼らは、制作費に予算が出せないという経済的事情から、枠を自分で作り、カンバス布を貼り付けて絵を描いている場合があります。

この場合、額は特注となります。

展示している作品を見れば、その旨明記してあることが多いです。

また、シンプルな額を手作りしている作家さんもいます。

そんなこんなで、規定のサイズなのか、オリジナル品なのかというのをまずチェックします。

絵を展示している場合、『タイトル・サイズ・何に描かれたのか』というのは、だいたい描いてあります。

『バラ F3号 カンバス』

とか、

『ひまわり 50*60 木製パネル』

『グラジオラス  F10 カンバスボード』

などというふうに書いてあるということです。

もし書いていない場合には、買う前に確認しましょう。

『額付き』とか、『額別』というのも明記してある場合が多いです。

なぜならば、額縁は、物凄く高いので、『バラ F3号 カンバス5万 額1万』

などというふうに、金額を別々に書いてある場合もあるということです。

******

私の経験では、企画画廊さんなんかでは、額縁代金は含まれていません。

ごく稀に、額が含まれている場合は、本体価格とは別に額の値段もプライスカードに明記してあることが多いです。

 

●専門家用と、練習用カンバスというのがある。

アタシも、画材の事、詳しくないので良く解らないですけど、油絵を描くのに一般的に使われている品には、

●麻カンバス(専門家用)

●練習用カンバス(コットン・コットンと麻の混合布・化繊)

●カンバスボード

というのに分かれているみたいです。

●麻カンバスというのは、巨匠とか、日曜画家などのお金持ちが使うカンバスです。

天然の麻100%で昔ながらの製法で作っているので、たぶんですけど、将来、作品の修復をしようとしたときに、修復しやすいってことなんだと思います。

●練習用カンバスというのは、コットンが混じっています。

コットンが混じっている場合、完成した作品には、明らかなる差があることが判明しました。

麻100%のカンバスというのは、コットンMIXよりも、より、油絵の具が、面に固着し、強靭な画面が作れるのです。

また、コットンが混じっていると、油絵の油が、裏面にまで染み出てしまったり、下塗りを何度もしなければならなくて、それであれば、麻100%を買ったほうが、安かったんじゃないかと思えてきます。

長期に色を塗らずに保管すると、コットンは、黄変激しく、シミも出来てしまいます。

一応、世の中の価値的には、『専門家用カンバス』と呼ばれている、お高いブランドカンバスというのと、量産されている安いカンバスというのがあるってことで理解してください。

カンバスボードというのは、ダンボールの上に、カンバスをノリで貼り付けた品です。

アタシは、壁に掛けて絵を乾燥させるので、カンバスボードは使っていません。厚さが薄いので場所をとらない上に、カンバスより安いので、使っている人は多いです。

額に入っていた場合、どちらなのかは、見分けつかないと思います。

売られている作品の場合、『カンバス』に描かれているのか、『カンバスボードに描かれているのか』などの説明は、必ずされていると思います。

また、疑問に思ったときには、画廊や、作家さん本人に聞いて、確認してから買うことをオススメします。

●専門家用カンバスの値段って、いくらくらいなのか?

お高いカンバス布というのは、シッカリした麻のカンバスに、白い塗料(下地)を塗って販売されています。

計算したら、1メートル3000円もしています。

うっひょー。お高いブランドの服地買えちゃうわぁ。

そんな感じで、まず、『専門家用』価格に驚くアタシ。

でも、小さい絵だと、1メートルで6-8枚は取れますから、8枚取ったとすれば、だいたい、一枚当たり400円前後ってことになりますよね。

この他、枠というのが売られていて、そんなのも、ピンキリなんです。

ハッキリ言えることは、額に飾られている絵が、専門家用カンバスに描かれているのか練習用なのかというのは、全く解らないということです。

額のフタを開けて、裏面を確認しなければなりません。

裏面見れば、解ると思いますけどね。少なくとも、画廊の人は解るはずです。

画廊の人も解ってないみたいだった?そんな画廊で絵を買うのは止めましょう。

幅が2メートルある大きい絵の場合、カンバスだけで6000円。その他、枠も同じくらいかかります。あと、下塗りするのにも大量の絵の具がいりますよね。

下塗り絵の具だけで、やっぱ、6000円位かかるかもなあ。

絵を描く前の段階で、18000円以上は必要ってことっすかね?

ま、200万円で売っているんですから、高い投資ではないでしょう。売れた場合に限りますけど。

●練習用のカンバスと、専門家用のカンバスに描かれた絵の違いって何ですか?

アタシが身を持って描いてみましたところ、高級カンバスと、安いカンバスの差は、明確にありますね。

何が違うのかといえば、絵の具の定着です。

練習している時には、あまり解らないですけどね。

時間が経つと、コツトンMIXのカンバスは、油が裏にも染み出てしまい、画面が黄色く変色していました。

そんなもんで、もう一回、白で下塗りしなければなりません。

ま、安いカンバスは、下塗りの回数を増やさなくてはならなくて、その分の絵の具代と手間賃というのと、麻100%と、どちらが、安いのかというのは、最近微妙だなあと思っています。

アタシの場合、大きいサイズは、自分で枠を組み立てて、お高いカンバスも使っていますけど、お高いカンバスに描いた作品の方が、絵の出来上がりはいいっすね。

オーラが出ているというか、『バーン』という感じに仕上がってます。

サイズが大きいってこともありますけど、本人も、無意識に『高いカンバスだから、いい作品を作ろう』みたいな、やる気に繋がっているのかもしれません。

そういう、作家のモチベーションという部分の影響は大きいような気がしますね。『350円の練習用カンバス』だと、失敗してもいいやというキモチになり、上塗り、上塗りという結果になっているといえなくもありません。

結果的には、大量に塗っているので、あまり差はないんですけどね。

たぶん、何百年か経った後差が出てくるのでしょう。

でもね、お高いカンバスに描かれているからといって、値段が高くてもいいというのとは違うでしょう。

アタシの感覚でいうと、麻とコットンミックスというのは、大差ない値段で売られているのです。違ってもほんの少しです。

ですから、今後仕入れるとすれば、アタシは、安売りの麻100%を買うだろうということです。

絵が売れてきたら、お高いカンバスにシフトしてゆく予定です。(今も大きいサイズはフナオカ専門家用よぉ。)

お楽しみに。

Q.油絵のこと、よく解らないのですけど。

そうでしょうとも。

初心者は、『どんな画材で描かれているか』というのにこだわってはいけまん。

気に入って、手に入れられる品であれば、とりあえず、どんな絵でもいいから、一枚買ってみるというのをオススメします。

版画とか、美術館で売られているオフセットのポスターとか、新聞のカラーページなどを飾っても構わないです。

その絵と、余裕ができたら、今度は一枚油絵を買ってみて、二つを並べてみてください。

そうすると、違いは解ると思います。

並ぶと、迫力の差は歴然としているからです。

アタシが、油絵に惹かれているのは、やはり、その絵の具の力強さですね。

完成したときの、存在感が圧倒的に違うのです。

同じ時間をかけて制作するのであれば、強靭で、見栄えのする、迫力のある作品を残したいというのが、私が油絵に流れた理由です。

もし、詳しく知りたいということであれば、油絵の具のセットを一式買い、一枚描いてみるといいと思います。

油絵の本質が理解できます。

この、『あーと雑学』の最初の頃に、絵の価値と、耐久性というのは、比例しているとお話しました。

そうなんです。『耐久性がある作品』は、そうでない作品よりも、価値が高いのです。

Q.時間をかけて描いた絵の方が価値が高いのでは?

それは、絵によると思います。

5000時間かかりましたから、500万円です言われて、アナタはどうしますか?

『へぇー』と3秒程絵を見て、次の絵に流れてゆくでしょう。

『制作時間』にこだわるアート初心者は多いですけど、そんな人に限って、高い絵など、ゼッタイに買いません。

絵というのは、趣向のモノなのですから、お値段の折り合う範囲で、気に入った品であれば、それでいいじゃないですか。

逆に、制作時間が何時間かかっていようと、お値段が折り合わなかったら、アナタはゼッタイに買わないんです。

『制作時間がかかった絵は、その分お高い』ワケで、『購入の最大の決定要因』である、価格に強く連動していると考えてください。

でも、向学の為に、良い作品を沢山見るというのはオススメです。

美術館に展示されている絵は、イイ絵が多いです。(最近の外国からの借り物は、イロイロですけどね。)

絵を見る時に、これは、何時間位かかったのかを考えながら見るといいと思います。何千時間もかけて描かれた絵というのは、素人の公募展以外ではそんなに見かけないけどなあ。

それに、時間がかかっている絵だから、イイ絵とも限りません。

●制作時間と完成度

時間がかかっているからいい絵というのもあるし、時間がかかっているからダメになってしまう絵というのもあるんです。

ピカソは、『筆を何処で置くかというのも、画家の才能の一つである』と話していました。

絵をどこで完成と判断する能力も、作品作りには重要なんです。

昔の宮廷画家の描いた絵のように、給料をもらいながら、壁画などを制作して、自分で絵の具から作って、何年もかけて描いた絵というのも存在しないワケではありません。

でも、よく考えてみてくださいよ。アナタは、画家に給料払い続けるワケじゃないんですから、そんなに時間かけて絵を描いていたら、画家は経済破綻してしまうでしょう。

それでも、油絵とか、テンペラ画のような、重ね塗りのきく画材を、薄く溶いて何度も何度も塗り重ねた作品というのは、カンバスの底の方から輝いて、まるで宝石みたいに美しいモノなんです。

だからね、アタシは、そういう作品のことを否定しているということではありませんよ。何百年も経った今でも大切にされて、修復されて、私たちの目を楽しませてくれているということですから。

でもね、庶民に買える品では無いということも理解してください。

アート初心者は、画廊でそういう絵が買えると勘違いしてはいけません。

モチロン、買えますけどね。お値段も●千万円ですということになるし、ホンモノかどうかだって怪しいですからね。

取り寄せてもらって実物を見て『これが、中世ヨーロッパのテンペラ画です』と言われても、ホンモノかどうか、見分けがつかないでしょう。

そういう次元が違う話なので、手に届かない品のコトより、目の前で買えそうなアートの研究をしろと言っているのです。

●短時間で絵を描く有名画家っていますよね

絵が短時間で描けるタイプの画家というのは、何千枚も絵を描き続けた結果、短時間で、自分の思う場所に描画できる能力を見につけたのだと考えてください。

日本にも沢山いますよね。

短時間で描かれた作品なのに、値段は高い。

絵は結果が全てなんです。

制作時間と比例して、価値が上がってゆく作品というのも存在しますけど、そういう作品であっても、価値が出るというのは、絵がきちんと描ける人が作った作品に限られます。

高い値段で売買されている絵には、『高い技術』も描きこまれているということなのです。

結果的に、短時間で描いた作品だということもあると思います。

でもね、制作のペースというのは、『急いで描いた絵』というのとは別なんです。

晩年売れっ子になると、物凄く絵が乱れてゆく画家さんというのがほとんどですね。依頼者が殺到して、仕事を断らないとそうなりますよね。

ピカソだって、ミロだってそうなんです。

アタシは、晩年の作品には、全くがっかりさせられました。

沢山見ていると、絵の荒れ方というのまで解ってくるんですよね。

荒れている絵と、短時間で描かれた絵というのは、違いがあるということです。

短時間で描かれていても、『優れた作品』というのがあるということです。

逆に、『儲けようと急いで描いたので、荒れた絵』というのも存在するということです。

そういうのは、値段にちゃんと反映されています。ホントっす。

同じ人が描いた同じ号の絵であっても、値段が10倍も違ったりするんです。

画家だって人間ですから、気分や、周囲のゴタゴタや、生活のリズムなんかで、絵が良く出来たり悪くなったりするんです。

安定して優れた作品を大量に残してきた画家というのは少ないです。

昔は戦争で中断されたという作家さんも沢山いました。

よーするに、『結果のイイ絵だけが高値で売買されている』ということになります。

絵は結果で勝負だぜ。

●失敗した上に描かれた絵というのはどうなのか?

どうなんでしょうね。

そこまで公開している画家はアタシ位でしょうけど、制作日誌なので仕方がありません。

左の絵は、色は何度か塗り重ねましたけど、全体を書き直したというワケではありません。透明感が保てているなと思います。

この絵は、アタシの作品の中でも、特に出来がヨカッタんっすけどね。(実物みると解ります。)

やはり、いいカンバスに、失敗しないで描いた作品の方が、透明感があって、キレイかなと思います。

塗りなおすと、下地を透かせて、上の色を出すというような技法が使えないもんで、その分落ちるかなあ。

描いてて、その辺が不満ですよね。

でも、絵を仕上げるという作業を繰り返すことでしか、絵は上手くなりませんので、売れる目処の無い作品は、どんどんと新しい絵を描いてゆこうと思います。

画面も頑丈になるし、厚みも出てくるんで、それはそれで、アリかなと。

多作系の油絵の作家さんは、失敗する率も高いので、結構使いまわしているはずです。

噂によると、テレビに出てた早描きの画家さんも、速攻で使いまわすという裏話を聞いたことがあります。

使いまわしているというのが、次の作品でバレたりする作品は、マズイですけどね。通常、そういうのは解らないくらいの完成度に仕上げているはずで、アナタに、見分けがつくということは無いと思います。

下にどんな絵が隠れているのかを考えるより、一番上の絵を、アナタが金を出したいと思うかどうかということが、より重要だということでご理解下さい。

●絵がひびわれていますけど。

油絵って、ひび割れちゃうことってあるんですよね。

アタシの最近の作品にはあんまり無いと思います。

バリ島は、作品作りには過酷な国でした。

絵の具がひび割れるというのは、乾燥するスピードと、絵の具の粘度との関係が上手くいっていないときに起こります。

ゆっくり乾燥すれば、ひび割れないのですけど、バリは熱帯なので、急激に乾燥してしまい、絵の具が急に縮んでしまい、ひび割れが起きるのです。

また、特にひび割れしやすい色というのもあります。

キャンバス布もしょぼかったという理由もあります。

赤や青などを直接使って厚塗りすると、ひび割れてしまうことは多いです。

私が今販売しようとしている作品がひび割れているということは無いと思いますけど、今後ひび割れる可能性は無いとは言えません。

それは、アタシの作品でなくても、同じですね。

直射日光の当たらない場所に、ガラス付きの額に入れて飾るというのがポイントだと思います。(それでも、ひび割れるときには、ひび割れます。)

絵にライトなんて当ててはいけません。

そういえば、展示中なのにひび割れている絵というのも見たことあります。100万円くらいしてましたけどね。ま、いいっす。

そういう、ひび割れとは関係なく、人気があれば高い品もあるってことなんだと思います。

もし、売っている段階でひび割れていて、それが気になるのであれば、買わないことっすね。

作家ご本人が、その場にいるような展覧会の場合、『修理してから売ってくれ』などと頼んでみるといいと思います。本人ならば、修復は、そんなに難しくないです。でもまあ、全く同じ色には仕上がらないっすね。その辺、少し絵の感じが変わってくることは仕方がないと思ってください。

展覧会の前は忙しいし、展示の一ヶ月の間、少しずつひび割れるってこともありますからね。

そうなったときに、直してもらえるのかというのはポイントっすね。

●質問はだいたい、こんなこんな感じでした。

それにしたって、イロイロな事をみなさん質問してくるもんですよねぇ。

『絵を買いたい』という強い興味の裏側なんだと思いますね。

イロイロな作品を沢山見て、気に入ったら買ってみましょう。

ウチにあるのは、バリ島で買った無名の人の油絵ですけど、毎日楽しんでいますよ。

『この絵が欲しい』という作品には、滅多に会うことはありません。

出会えればラッキーなんです。

800ドルと言われたその絵は、550ドルまで値切れました。(F4程度の作品です)

『それでもまだ高い』とオットは悩んでいましたけど、

『そんなに気に入ったのなら、多少お高くても、買うべきだ』とオットにはアドヴァイスしました。

何故なら、『絵画』というのは、一生のウチに何枚も買うモノではないからです。

いい絵っす。

次にバリに行ったとき、彼の作品を真似した模倣品が大量に売られていて、そっちはあまりにも粗悪だったんで、笑っちゃいましたけどね。

全く、どーいう国なんだと思わないわけには行きませんでしたけど、ホンモノとニセモノというのは、差があるんです。

アートをみやげ物として売っている国には要注意っす。

でもまあ、安ければ、それはそれで、価値あるってこともあるんで、まずは『気に入って、ムリしない範囲で』楽しんで頂くのが一番だと思います。

Established 1998 Rica's Bar WEB SITE & Since 2003 Atelier Ojara.
Copyright (C) All Rights Reserved by Rica Ojara.