『版画を買う前に知っておきたいこと』

今回は、版画に特化して、販売されている版画には、どんな実態があって、どんな所を

見て買えばいいのかというのを、ご紹介したいと思います。

◆ 版画のエディション番号について - 1 ◆

オジャラも版画を作ります。私の作品も含めて、購入を検討をされる前に、

購入者が知っていたほうがいいということがあります。

『銅版画』も、『木版画』も版画です。

現在『芸術品』として販売されている版画は、版画のルールに基づいて、番号管理(エディションを明記するということ)があって、作家は、それを守らなければなりません。

オジャラは、それがどんなルールなのかを、版画を買おうと思っているお客様に

事前に知っておいて欲しいのです。

●版画について

版画というのは、版を使って、同じ作品をいくつも作ることです。

ですから、物理的には、何百枚でも作れてしまうのです。

印刷技術が発達していなかった昔、書物などは、手で書くか、版画にして本にするしかありませんでした。

版画というのは、『同じものを、素早く、沢山作りたい』という所からスタートしているのです。

ex.聖書の印刷など

●流通している版画とは

現在私が版画制作をしているのは、銅板画、木版画、リノニウム版、シルクスクリーン、リトグラフなどが主流です。

銅版画というのは、その、大量生産を、銅板を使って作る版画のことです。

銅版画は凹版といわれ、へこんだ部分にインクを入れて印刷します。

この凹の部分をどうやって作るのかというのが、銅版画の技法になるのです。

木版画や、リノニウム版は、凸版と呼ばれ、板に線を彫り、凸の上の部分にインクを塗って仕上げます。

リトグラフというのは、平版と呼ばれ、版は平らのまま、科学反応を使って製版します。

『どうやって作るのか?』をよく聞かれることもあり、版画の作り方などは、私のホームページの、アートにチャレンジのコーナーなどで、今後、ご紹介していくつもりです。

作り方が解ると、購入の検討がぐっと、楽になるからです。

●銅版画にはどんな技法があるの?

銅版画以外の版画は、銅版画ほど技法が多様ではありませんので、一度基本的な事を理解してしまうと、見るのはそんなに難しくありません。

銅版画の特徴は、他の版画と比較して、『凹を作る技法』が大変多いのです。

私の版画のコンテンツ『銅版画にチャレンジ』では、この技法も含めて、作品をご紹介しています。

例えば、エッチング、シュガーチント、アクアチント、ドライポイント、メゾチント、エングレービングなど、イロイロな方法があるのです。

そればかりでなく、刷りにも特徴がある場合があります。ガンピ刷りとか、多版刷りとかそういう名前で表現されます。

専門的な勉強をされていなくて、コレクターでもない方には、なんのことやら、よく解らないんじゃないかと思います。

別に解らなくてもいいですけど、知っていると、銅版画の世界は、ぐっと楽しくなります。

銅版画の作品には、どんな技法で版をつくったのがどうかというのを、表示してあるとか、説明があることが多いです。

具体的には、『銅版画 エングレービング』とか、『銅版画 ドライポイント』などと作品の下に、技法の説明が書いてあることが多いということです。

●エディション番号って何?

普通、左端に

1/100

などというように、100枚作ったうちの一枚目などという風に版画一つ一つに記録をしてゆきます。

エディション番号というのは、版画についている番号のことです。

オジャラは、エディションというのが、実際に、版画に必要かどうかも、まだよく解っていないのです。安ければ、別に、エディションなど、なくても構わないと思ってます。(個人的にはね。)

それは、何を意味しているのかというと、フツーの印刷物と同じ扱いになるということです。

たとえば、写真をコピーしますよね。

何枚でも、コピー機で、同じ書類をコピーできてしまいます。

そのコピーに、イチイチ、『何枚分の、何枚目』などとつけたりしないでしょう。

印刷物というのは、そういうものなのです。

ですから、銅版画に、エディションを入れないというのは、インクジェットでプリントしたアナタの写真とか、コピー機で300枚取った書類とか、ネガプリント写真付き年賀状などと同じ印刷物ってことなんです。

大昔、エディションなどによる、作家の作品への意思表示が無かった時代の作品には、エディション番号というのはついていないのです。

歌麿の作品が何枚刷られたのかなんて、解らないのです。

だから、技術のある人は、芸術的価値の高い作品のニセモノを大量に作って、『ホンモノだ』と言い張って、儲けたりしたんですよね。著作権が守れない。サインが無いと、自分の作品だと主張できない。そうすると、芸術家は泣き寝入りっす。

また、芸術を扱う人たちの間には、『この世に存在している枚数により、芸術の価値を判断する』という『数による価値』が存在しています。

『数が少ないから、価値が高い』という事実があるということです。

●作者のホンモノ作品かどうかを確認できないと、ニセを作られてしまう

世の中の流れにも変化がありました。

大量印刷は、印刷機に任せよう。昔の方法の版画は、手がかかるから、芸術品として、大切にしよう。

ま、そんな感じでしょうか?

まだ、作品の管理がシッカリしていなかった時代には、ニセの作家が大量に粗悪な作品を作って、大儲けしてたこともあるんです。(印刷技術が発達した現在では、印刷物をホンモノだと言い張り、高値で儲けている人がいないわけではありません。)

棟方志功さんの作品は、ニセが多くて有名ですよね。(サインがついているのにも関わらずです。)有名日本画家さんの日本画しかり。

鑑定団で、日本画は、特に騙されている人が多いでしょう。ホンモノかどうかを確認するような資料が残っていない作家さんは、贋作作家の思う壺っす。

また、情報の量が極端に少なかった時代ですので、実物を見たことも無いのに、『有名な画家さんの作品だ』などと薦められると、ホンモノだというのを疑わずに買ってしまっていたという実態がないわけではありません。

まだ、そういう考えが、画集などの資料がシッカリしていなかった時代は、偽モノを大量に作って、日銭を稼いでいた才能の無い人が多かったんです。

●どうしてエディションをつけるの?

購入する人は、価値が無い品を高く買ったりするのは、アタマにきますからね。

『誰が、この作品を、何枚作ったのか』ということを、キチンと表示し、そういう、ちゃんとした筋の作品だけをちゃんとした筋から購入したいと思っているのです。

『ホンモノが欲しい』

『騙されたくない』

『適正な価格で品物を買いたい』

『存在枚数が希少(だから価値がある)作品を持って自慢したい』

というニーズが高いということです。

芸術家は貧乏なので、少しでも高く作品を売りたいと、いつも思っています。だから、『これは、本人が作った作品だよ。●●枚しか作っていないから、希少(=芸術的価値も高い)だよ、安心して買ってください。』

と、お客様に、自分の作品のホンモノかどうかを示したり、数が少ないから、価値があると思ってもらえると信じて、版画に番号をつけるようになったのです。

(数が少ないから、価値があるというのは、ある程度ホントみたいです。でも、それ程、枚数による価値にこだわるのであれば、手書きの一点モノを狙うべきです。版画は、版画なんです。版さえ残っていれば、大量生産もできてしまうのです。) 

●サインも確認しましょう。 『版画のサインは、何故エンピツで書かれているのか?』

これは、ホントウの謎ですよね。

額縁屋のオヤジ説だと、『エンピツのサインは、ペンのサインなどと比較して、真似できない』のだそうです。

多くの版画家の方は、サインも、他の人が書けないような、凝ったサインをご利用の方が多いです。

サインを見れば、誰の作品かが一目瞭然となるらしいです。

ですから、初心者の方が版画作品を買う場合には、この、『エディション番号と、サイン』が、エンピツで書かれているのかを、必ず確認するようにしましょう。

サインペンなんかでエディションつけている人は、ちゃんと、学んだことが無いとか、教えてくれる人がいないとか、間違いを指摘してくれる、友達もいない人なんで、そういう作品も買うのは避けるといいと思います。(気に入れば、何でもいいんですけどね。笑。)

●だから、アタシの版画作品には、エディションやサインをエンピツでつけることにしています。

そういう、世の流れもありますから、オジャラの版画作品にも、エディション番号とサインをつけています。

どう考えても、アタシと同じ作品(アタシの作品は、ディープエッヂングと呼ばれ、腐食が深く、版を作るのも刷るのも難しい上に、絵が独特なんです。)が、他の人に作れるとは思えないっすけど、世の中には、人のパクリだけは、天才的という職人肌の方が存在しないわけではありません。

誰だって金は欲しいです。

ま、今の所、それほど売れているワケではありませんけど、電子本だって、大量に盗まれてしまって、アタマに来たんですから、今後だって、何が起こるか解りませんもんね。

自分でも、今から気をつけて、出来ることは、しておこということっす。

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